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 ノリコさんの家のリビングでボクは一人、ソファに座ってボーッと天井を見上げていた。

 ノリコさんに、健吾に、腹が立たないかと言ったら嘘になる。もしもっともっと早くに母親のことを教えてくれていたらとも。やはり思ってしまう。

 麻美はもうこの世にいない。甘えることも、文句を言うこともできないのだ。

 一方で健吾のところに残しておいてくれたことへの感謝もある。ボクは人に見た目についてあれこれ言われるのが好きじゃない。麻美に連れていかれていたら、俳優としての道しか残されていなかった。人前で親子として接することもできない、そんな生活は果たして幸せだと言えるのだろうか。