「そうだね。マユに頼まれても、時々くらいは掃除やご飯作りはしたかもしれないね。でもそれ以上は家庭の問題でしょ? ご飯の作り方教えたり、授業参観や運動会に参加したりはしないよ」

 ノリコさんは指先で涙を拭う。

「ユイちゃんのお母さん役、ホントに楽しかったな。マユはああいう子だから、面倒なことはしないし、よくも悪くも我が道を行くって感じだけど、ユイちゃんは教えたら器用だからすぐに自分のものにするし、教えがいもあったし、毎日、成長が楽しめた。その度に麻美に腹が立ってね、何でこんな楽しいこと放棄するんだって、あんたはバカだよって」

 そんなノリコさんを見て、ボクは何も言えなかった。