既に撮影が始まってしまっていて、要求をのむわけにはいかなかった。

 晶子はノリコさんに相談した。娘を預かれる人はいないか。それも晶子と普段関わることのない人がいい。

 ノリコさんはすぐにボクのことを思い浮かべたらしい。晶子の弟であり、しかし実際に一度も晶子と会ったことがない人間。とっておきだと思った。

 でも問題は麻子との約束だった。晶子のことや華のことを内緒にして、預かるよう持っていくことはできないか。

 考えに考え抜いて、華に作務衣を着せた。髪型も工夫して侍の言葉を使うよう華に説明し、実際練習もした。