理由は分かる。ブシのことはぶっちゃけ説明がしづらい。

「実は知り合いの子供を預かっちゃったんだけど、正直、ボク1人では荷が重いからマユに手伝って貰ってるんだ」

 無難過ぎるくらい無難な説明。見事なまでに明言は避けた。冷静に考えればしっちゃかめっちゃかな話だ。
 
 知りあいって誰? どうして無理なのに子供を預かったの? マユが寝泊りする必要まであるのかな?

 そう聞き返されたら、ボクは答えを持ち合わせていない。

「あ、そうなんだ」

 ノリコさんのボクに対する信頼はボク自身の想定より遥かに鉄壁なものだった。微塵も疑う様子もなく、ノリコさんの顔に笑顔が咲いた。

「ユイちゃんのところにいるんだったら安心した。マユでよかったらどんどん使ってあげて」

 ノリコさんが帰った後、生まれて初めて腰が抜けた。玄関に座り込んでいるところにのん気にマユが顔を見せ、思わずデコピンをしたくらいだ。