生活が全てひっくり返った。分刻みのスケジュール。睡眠時間を作ることさえままならない。家に帰れない日々が続き、晶子と唯一の世話は健吾に任せきりになった。申し訳ないと思うものの、マネージャーが常に目を光らせているから、健吾への連絡さえ思うようにさせてもらえない。

 立て続けにいくつかの映画やドラマの撮影をこなし、ようやく一息ついた時、健吾は麻美に話を切り出した。

「せっかくのチャンスだし、君は夢を追うべきだよ」
「どういうこと?」
「夢を追える人は限られてる。本当にラッキーなことなんだ。君はそれを捨てるべきではないよ。僕は君の応援がしたい。迷惑をかけたくないんだ。そのためには別々に暮らした方がいいと思う」

 健吾はテーブルの上に、健吾の部分だけが記入済みの離婚届をソッと置いた。