例えこのまま花が咲かなかったとしても、いずれ嫌でも夢を追うことができなくなる時がやってくる。夢があるならば、それまでは追いかけてはくれないか。

 健吾に言われるがまま売れない女優と主婦の二足のわらじの生活を3年ほど過ごし、麻美は2人目を妊娠した。それがユイ――唯一《ただひと》だ。

「私が麻美と知り合ったのはこの頃なの」

 そう言って、ノリコは遠くを見つめる。