「私から話すわ。いいよね?」

 ブシはゆっくりとうなずいた。

 ボクはノリコさんに視線を移した。

「約束をしたの、あなたのお母さんと」

 耳に入っている言葉は確かに日本語なのに、不思議なほどボクの脳みそがそれを言葉として認識するのを拒絶した。

 ボクがまだ幼い頃、母親の断片を見つけたくて――父親は母親に関しては、一切口を開かない――まさに藁にもすがる思いでノリコさんに母親のことを聞いたことがあった。