「私は騙されてなんかないよ。ホント、大丈夫だから」

 侍の言葉遣いじゃない。ごくごく普通の女の子の話し方。この話し方を聞くのは2回目だ。ただし、以前は寝言で聞いただけだから、ボクに向けられるのは初めてのことになる。

「でも……」
「約束を守るためにはユイには本当のことを話せなかったの」
「約束?」

 突拍子もない単語に、頭がついていかない。

「だから武士の格好して、話し方も変えてて。でも……紛らわしいことして、ごめんなさい」

 すまぬ、でもなく、かたじけない、でもなく、ごめんなさい。