一瞬だった。一瞬で状況が暗転した。

 男に腕をつかまれた瞬間、ヤバイと思う暇もなく、腕をひねられたと思ったら、床に腹ばいにねじ伏せられていた。

 腕は背後に回され、そのまま固定される。痛みを感じつつ、それでも諦め切れず、力任せに暴れるものの、苦痛が増すばかりで解放には至りそうもない。

「離せ……離せよ!!」

 もう叫ぶくらいしかできなかった。

「ブシいるんだろ!? 逃げろ!! お前は騙されてるんだ。早く逃げろ!!」