でも何もかもが想定通りに進んだわけじゃない。雇った男女がノリコさんが思う以上に、大仰に危機感を感じてしまったことが事件を起こす引き金になっている。

 女の子を連れて帰らなければ大変なことになる。男女はそう言っていた。

 正気を失った男女は、脅迫用に用意しておいたナイフをそのまま武器として使い、実際にマユの腕を切りつけてしまった。

 後から思えば、その程度の怪我で済んだことはラッキーだった。実際、ボクはマユを守れるなら刺されても構わないと、ナイフを持つ男の至近距離まで近づき、格闘までした。加え、ブシが渡してくれた警棒がなければ、マユが今、どうなっていたかも分からない。