一度たりともないがしろ扱われたことはなかった。おかけでボクは母親のいない寂しさをほとんど感じることなく、今の今まで生きてこられている。

 全ては――マユのおかげだ。かくのごとくマユには感謝しかないが、だからと言って、いつ何時もマユが輝かしく見えるわけではない。

「早く眼を覚ましな、マユ」

 寝癖満開の髪。スッピンのマユは目が腫れぼったく見える。一重ではないが、微妙に残念な奥二重。さらに残念なことに、寝起きのマユは目が死んでいるのだ。まるで水面に浮かんでいるフナのよう。

 そんなフナのような目がギョロリと食卓を向いた。