ノリコさんがリビングに顔を出した直後、ボクは激しく後悔した。

 彼女の背後に1人の男の姿があったからだ。

 男はスーツ姿だった。年の頃はノリコさんより少し若い程度。眼光が鋭く、すぐにノリコさんの助っ人なんだと分かった。

「ちょ、ちょっとどういうこと?」
「ユイちゃん、どうか何も聞かずに帰ってくれる? お願い。乱暴なことはしたくないの」

 今、何もせずにこの家を出れば手出しをしない。ノリコさんはそう言っている。

「全然意味分かんないって。だからどういうことなのさ?」

 思わず立ち上がっていた。