しばらくして、ノリコさんがグラスにお茶を入れてやってきた。

 藤沢家の夏の冷茶と言えば、麦茶じゃなくほうじ茶と決まっている。一口含めば、それは今も変わりなく、少しだけ凝り固まった心を解きほぐしてくれる。でもボクはもっぱら麦茶を作る。ほうじ茶も嫌いではないが、ボクの中ての冷茶はやはり麦茶なのだ。

 向かいにノリコさんが座った。ボクは真っ直ぐにノリコさんを見た。

「ユイちゃん。私、小さな女の子なんて知らないわよ――」

 ノリコさんの一挙手一投足に注意を払う。

「――っていうのは通用しなさそうね」