「あぁ……そうなんだ。ホント、困った子ね、マユは」
「借りていいよね?」

 そこまで話せば、断ることはできないはずだ。

 ようやくノリコさんの体が退き、ボクはノリコさん宅への侵入に成功する。

「お邪魔します」

 三和土にブシのものらしい靴は見当たらなかった。でも、それくらいは想定内だ。最初にインターフォンを鳴らした時、応答がなかった。モニターを見てボクだと気づいて、急いで隠蔽工作をしたという可能性は排除できない。