予感。いや、虫の知らせというべきか。

 無視することも憚《はばか》られ、ボクはポケットから紙を取り出した。

 くしゃくしゃになってしまった紙。救いと言えばボクは基本、ジーンズは洗濯しない。そういうものだと聞いたことがあるからだ。だからジーンズは洗濯はせずに天日干しをする。

 紙を見て思い出した。これは――ブシのリュックに入っていた手紙の一つだ。あの時――男女に襲われて、何とか逃げ出そうとした時、道端に落ちていた最後の1つ。その場は丁寧に扱う余裕もなく、やむを得ずポケットにねじ込んだ。安全なところまで行ったらブシに返そうと思っていたのだ。しかし、マユの怪我があり、手紙のことは忘れてしまっていた。