病院を出て、自転車置き場へと向かった。歩きながらスマホを手にする。マユからの連絡はなかった。まだブシは見つかっていないということだ。

 自転車の前に立ち、ズボンの右のポケットに手を突っ込んだ。しかし、鍵が手に当たらない。

 あれ? 左のポケットに手を入れるも同じ。焦って後ろのポケットに手を入れたところで、予想だにしない感触が指先にあった。

 紙だ。紙のようなものがポケットに入っている。何だ? 最初、全くピンとこなかった。急いでいる。紙切れなんかに構っている時間はないはずなのに、どうしてか、どこか引っかかっていた。