突然ですが、武士拾いました

 仕方なく、ボクは一般病棟を歩くことにした。あくまで見舞客を装い、平然と歩くことに努める。

 リノリウムの廊下を歩く時に鳴るキュッキュッという音を聞きながら、ボクは無力感に苛《さいな》まれた。

 ただ闇雲に廊下を歩くくらいしかできない。知り合いがいるわけでもないから病室に入るわけにもいかず、せめてもの抵抗は、たまに開いているドアの隙間からチラリと病室内を覗くことくらい。