「どうぞ」
「かたじけない」

 ブシは今まで通り椅子の上に正座し、湯呑のように両手で切子を持つ。背筋を伸ばす姿勢はお手本のように綺麗で、両手で丁寧に切子を口に運ぶ様は茶室で抹茶をたしなんでいる茶道家のよう。

 ボクはブシの対面に座り、コーヒーをすすりながら、ブシの様子を眺めていた。