ブシの母親はブシを誰かに預けようと画策した。多分、ブシを守るため。しかし身近な人間にかくまってもらってもすぐに犯人にブシの居場所が見つかってしまう。だからボクが選ばれた。ボクとブシはあの日が初対面だ。何の接点もない。犯人も容易にたどることができないと考えた。

 でも、ここでつっかえてしまう。

 ボクとブシに接点がないということは、あの日、ボクの家の玄関先に立ったのは、単なる偶然だったということになる。

 見ず知らずの土地に来て、娘を武士の格好をさせ、片っ端から娘を家の前に立たせ、家人が帰ってきたら声をかけ手紙を見せる。