ブシを迎えに来ると手紙にあった8/28まであと10日。遊びに出かけられるわけでもなく、部屋で過ごす時間が続くのだから、やりかけのゲームもクリアできるかもしれない。そんな意気込みでゲームを立ち上げたものの、タイトル画面から先に進められない。全く気持ちが乗らないのだ。

 画面はそのままにして、ボクはブシの寝顔に視線を送っていた。こんな非常時でも、ブシは怪獣に変身していたので、少しばかり心が和む。

 ブシの寝言を思い出していた。確かに聞いたのだ。ママ、会いたいよ、とブシが言ったのを。普通の女の子であれば何も珍しいことではない。しかし、ブシが武士以外の言葉を口にするのは初めてだった。

 驚き――というよりどこか納得していた。