マユがボクを見上げてくる。泣いて、でも笑っている。未だかつて見たことないくらいに今のマユの顔は美しい。そう思った。

「売れ残ったりしないから。サッサとツバをつけておかないと誰かのものになっちゃうよ」

 嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 どけだけマユがボクの知らないところで恋愛していても、最終的にはボクのところに戻ってくると――特に根拠はないが――そう思っていたから、今までは静観することができていた。