実際に声として発することができず、そんな度胸のない自分に叱咤していると、微かな寝息がボクの鼓膜をくすぐった。体操座りの姿勢のまま、ブシは船を漕いでいた。

 当たり前だ。遊園地ではしゃぐだけでも体力を使うのに、見ず知らずの男女にさらわれそうになった。怖かったはずだ。目の前で大人たちの乱闘も目にしたし、ナイフでマユが切りつれられるのも目の当たりにしている。