「ううん、止めとく」

 マユが何度か家を行き来している。着換えを取りに行ったり、メイクをしに行ったり。それを見逃されていると考えるのはあまりにも都合がいいというものだ。

 従って、マユの家も犯人に把握されている。

「じゃあどうすんの?」
「分からない」
「遠慮しなくてもいいのに」

 遠慮なんかじゃない。ボクやブシがマユの家に潜伏すれば、ノリコさんを巻き込むことになる。それに――。

「そうじゃなくて、ブシのことをうまく説明する自信がないんだ」
「うちのママ、そんなに頭でっかちじゃないよ。ちゃんと説明したら分かってくれる」