突然ですが、武士拾いました

 脳裏を過るのは"過剰防衛"の4文字。いや、犯人はことあるごとにナイフを振り回し、実際にマユに怪我を負わせたのだ。それはあの男女だって理解しているに違いない。仮に大きな怪我をしていたとしても、警察に届け出ることなんてできないはずだ。

 そう願って、とにかく足を進めた。

 男女らしき姿を見つけることなく、どうにかこうにかメインゲート前に到達した。マユの手に巻かれたハンカチが赤く染まってしまっている。あまりにひと目に着くからと、その上からボクの持っていたハンカチを結んだ。