背後から投げつけられでもしたらたまらない。ボクは通り抜け様に、ナイフをできる限り遠くに蹴った。男女からの距離に、とりあえずの安堵を得ると、マユとブシを追って進む。

 数歩進んだ床の端に、白い紙が1つ落ちているのが目に入った。時折風が入り込んでくるから、その風に運ばれたのかもしれない。

 ボクはその紙を拾い、ジーンズのポケットにねじ込んだ。丁寧に扱うべきものだろうが、そんな余裕はなかった。