ブシはこの紙や封筒を守っていたのだ。

 リビングの掃除をした時、リュックに触れただけでブシは激高した。それくらいにこの紙や封筒はブシに取って大切なものなのだ。出会った時に見せてもらった母親からと思しき手紙。多分、同じだ。きっとこれらの手紙は母親で埋め尽くされている。

 一頻り白い紙をリュックに入れると、すぐさまリュックのチャックを閉める。

「走れ」

 マユとブシの背中を押し、先に行かせる。

 振り向けば、女は戦意を喪失しているようで床に座り込んでいる。未だ身悶えている男の近くにナイフが落ちているのが目に入った。