特殊警棒は縦回転していたものの、不思議なくらいに綺麗に手の平に収まった。

 見れば、丁度バトンくらいの長さ。初めて触ったものの、その先端を引っ張ることで容易に伸ばずことができた。120センチの一般用の竹刀からしたら長さは役半分くらいか。心もとないと言ってしまえばその通りだが、贅沢は言ってられない。

 高校の途中まで剣道をしてきた。部活には入りにくかったから知り合いの経営している近所の道場で鍛錬を積んできた。そこでも周囲の目が気にならなかったわけではなかったが、面を着けている間は意識しなくていいし、稽古が終わった後も何のしがらみもなくすぐに帰宅できるのが部活と違ってありがたかった。

 棒状のものの扱いは人より慣れているという自負はある。

 歯を食いしばって地面を蹴り続け、いよいよマユたちに近づいた時には、女が後ろに引いたナイフを持った手を前方に繰り出す瞬間だった。

 マユは両手を顔の前に翳し、固く目を閉じている。