躊躇うことなくボクは地面を蹴った。頭にあるのはマユのことだけ。命に代えてでも、ボクはマユを守らなければならない。

 女がナイフを持つ手を後ろに引いているのが見えた。ヤバイ。間に合わない。

 焦ってしゃかりきになって足を動かす。

 その時、マユのすぐ背後でブシが白い紙の山の中から黒い筒状のものを手にするのが見えた。

 ――あれは?

 見覚えのあるものだ。ボクとブシが初めて一緒に買い物に行った時、刀の代わりにマユがブシに渡したもの。これでユイを守ってね。確かこんなことを言っていた。

 そう――あれは特殊警棒だ。間違いない。