ボクはそのまま男のTシャツの襟を両手でつかみ、背後の壁に男を背中から押し付ける。

 ギョ。魚のような声が男の喉から漏れ出す。

「よくもマユを……」

 ナイフはボクの脇腹のそばにある。刺せるものなら刺せばいい。その一心で男を壁に押し続ける。

 実際、チョンチョン刃先が当たっている。しかし刺すだけの度胸はないのか、男はナイフを持っていない片手だけで何とかボクを押し返そうとする。

 ボクと男で押し問答が続く。

「止めなさいよ!!」

 背後から突然のマユの悲鳴。思わず振り返ると、女がブシに近づこうとしていた。それを阻もうとマユが女とブシの間に割って入る。