壁の向こう側から不意に伸びてきた腕が一閃された。

 マユの顔が驚きに、そして苦痛に歪む。直後にボクの耳にもマユの悲鳴が届いた。突然のことで状況が把握できない。その間に、マユは体をくの字に曲げ、左手の手首から肘の間を押さえていた。

「マユ!!」

 マユに走り寄る。そこでようやく状況を理解した。

 逃げたと思った男がその場に立っていた。手には折り畳み式のナイフ。男の背後には女もいる。マユが男に襲われたのだ。