しばらくマユとブシは抱き合っていた。美人と美少女の抱擁は絵になるなだなんて思いつつ、言葉もかけずに2人を見守っていたが、ふと我に返った。

「帰ろっか」

 2人の空間に水をさすのはいかがなものかと思ったが、いつまでもここにいるわけにはいかない。ここは関係者以外立入禁止のエリアだ。職員に見つかれば注意されることは間違いない。

 ボクの言葉にマユがほっぺを膨らませた。

「私たちの邪魔してぇ」
「仕方ないでしょ? ここにずっといるわけにもいかないし。いい加減、遊園地に戻らないと」

 そこでマユは思い出したように柏手を打つ。

「そうだそうだ。お土産買わないと。ずっと楽しみにしてたんだった」

 これほどの窮地に立たされていたのに、しつこく土産のことを覚えていることは尊敬に値する。