マユがいち早くドアを開け、入って入ってと武士を招き入れる。

 マユの勢いに気圧されているのか、長いものには巻かれろと判断したのか、武士は大人しくマユの言葉に従って玄関の中に足を踏み入れた。

「かたじけない」

 三和土の前でペコリと一礼する。例え小さい子供だろうが、ここでも武士は武士だった。

 小さくも礼儀正しい武士の背中を眺め、味神々しいものだなとボクは目を細めて、その後ろ姿を見送った。