誰もがボクの顔を見ると息を呑むことを知っている。信じられないものを見たような顔。その顔には――衝撃もしくは驚愕が浮かぶ。

 今だってそう。ブシの手を握っている女と目があった。少し細めの一重のまぶたのその奥の瞳が揺れ、その女の唇がかすかに動くのをボクは見逃さなかった。

 え? 男なの? 

 声は届かなかったが、間違いなく女の唇はそう言っていた。

 物心ついた時からそう。いつもいつもいつも女に間違えられる。父親は野暮ったい顔をしているのに。だんご鼻で出っ歯で、挙げ句には特徴的な骨ばった頬。父の顔型ははまるで野球のホームベースのよう。