言葉を続けながら、マユが男女に近づこうとしているのを見て、ボクがマユの腕をつかんだ。

「ボクが話をする」

 いくら見た目が凶悪に見えなくても、中身までは分からない。マユを危険な目には合わせたくなかった。

「お願いだからその女の子を返して欲しい」

 追い詰めたからと言って、傲慢な態度取って犯人を刺激するのは賢くない。なるべく柔らかい口調を意識する。

「見逃してください」

 男が頭を下げた。未だブシの手を握る手には未だ力が籠もっている。諦めるつもりがないということだ。