やはり子供を1人引っ張るのでは速度が上がらず、人の波をかき分けて進んでいるうちに、ブシたちにかなり近づいていた。

 あと少し――あと少しで犯人と接触ができる。周囲は客でごった返している。接触し、騒ぎ立てればきっと犯人も諦める。そんな計算を頭の中で弾き始めたところで、計算が狂った。

「ちょっと待ちなさいよ!!」

 まだ少し距離があるのに、犯人に向かってマユが叫んだのだ。

「ちょ、ちょっとマユ!!」

 慌ててマユをたしなめたがもう遅い。