「どこかにいる?」
「ちょっと待って」

 マユがグルリと周囲を見渡す。ボクも負けじと見回すが、ボクの目にはブシらしき姿は入ってこない。

「いた!! あそこ!!」

 マユは右前方を指差した。その先を目で辿るが、まだボクには分からない。 

「どこ?」
「あぁ!! 行っちゃう!!」

 マユが慌てて追っかける。本当なら全力疾走したいくらいだが、人が多くてそこまではできない。