この子の母親は、娘を預ける家として、ボクの家の事情を知った上でこの家を選んだということだろうか。だとしたら知り合いの可能性も浮上するが、あいにくと侍の言葉を操るけったいな子供も、そんな子供を持つ母親にも全く心当たりがない。

 どうすべきか分からず、身悶えしていると、不意に背後から声をかけられた。

「ユイ、どうしたの?」

 振り返れば同世代の女の子が一人立っていた。

「マユ……」