「多分、そんなもんだと思うよ。大したことないって」

 ブシの様子は気になったが、敢えて軽口を叩いてみる。少しは空気が軽くなるかと思ったのだが、強張ったブシの表情はそれでも一向に変わらない。

「あとをつけられなかった?」
「そんなの分からないよ。とにかく必死だったし」

 2階に上がって、部屋の窓から道路を見た。ボクの部屋からだけじゃなく、父の部屋からも。道路が見えるのはこの2部屋だけ。

 見える範囲には、不審な人物も、気になるような車両も見当たらない。