「あの……少し話いいですか?」

 言葉遣いは丁寧でも、トーンは全く優しくなかった。マユは即座に危険を察知した。

「すいません、急ぎますから」

 マユはブシの手を握り、一目散に走って帰ってきたのだという。

 恐くて振り返ることはできなかった。ボクの家が見えてきた時、ようやく振り返った時には不審な車や男の姿はなかった。

「単に道聞きたかっただけだったりするかもしれないけどさ」

 ペロリと舌を出すお気楽なマユに対して、ブシは未だ蒼い顔をしていた。