施設に預けるなということは、もちろん警察に届け出ても欲しくないということだろう。しかしどこの誰かも分からない人の子供を――加え、侍の言葉遣いのけったいな子供を――八月末まで何も聞かずに預かる人間が一体どれくらいいるというのだろうか。

 ちなみに今日は七月二七日だ。手紙の内容を鵜呑みにするならば、迎えに来るまでの約一か月間、娘を預かれということになる。

 あいにくと体は空いている。夏休みに入ったばかりだし、ボクはバイトもしていない。大学二回生の身分は実に安楽だ。就活にはまだ早い。

 小さな武士を預かることに関しては、可能か不可能かと問われれば――可能。