あのリュックには、きっと人の目に触れてはいけない何かが入っている。そうでなければ、剣先まで繰り出したブシの行動の説明が付かない。

 そう決めつけようとして、でも――と考え直すボクがいる。出会った日、ブシに見せられた手紙の文言を思い出していた。

 知的障害があること、さらに一つのことに固執することがあると手紙にはあった。ブシがただ単にピンクのリュックに固執しているだけで、実はリュックには何の秘密もないという可能性はないと言いきれるのか。

 さして膨らんでもいない小さなリュックだ。ブシでさえ軽そうに持っている。大したものが入っているとも考えづらい。