母がいないことに理解も納得もしていなかったものの、母の痕跡となりうるものは本当に綺麗サッパリ、ボクの目のつく範囲から処分されていたものだから、母のいないことを悲しむ権利でさえボクは剥奪されていたことになる。

 そんなボクは小さい頃、鏡に向かってよく呟いていた。母さん……どこにいるの? って。おとぎ話ではないのだから、鏡が質問に答えてくれるはずがない。ボクの冴えない表情だけが幼い頃の記憶となって色濃く残されている。

 ブシの持つ色は――その時のボクと同じだ。