「知らぬ。忘れた」

 一旦、ボクを睨めあげたブシは、しかし次の刹那には逃げるように顔を背けた。ボクの視界を掠めていった諦めたような、それでいて割り切ったような、ブシの瞳の色は、あまりにも印象的だった。

 そして――この色を、その深さをボクは知っている。

 何度も何度も鏡で見た色。そう――ボクの脳裏で小さい頃のボク自身とブシが重なっていた。