「もうよい……帰る」

 カートから手を離し、一人で出口の方へ向かいかけたブシの手を反射的に掴んでいた。

「……もっと甘えたらいいんだ」

 ブシは小学校低学年の女の子だ。おやつを欲しがるのが当たり前。おもちゃを欲しがるのも当たり前。お母さんが恋しいのに至っては――常識だ。

 でもこれらは全て、ブシには該当していない。少なくともボクの目にはそう映っている。

「ボクやマユじゃあ、心もとないかもしれないけど……それでもブシより少しは長く生きてる。その分、失敗も成功もブシより経験してきてるんだ」