もしかしたら母さんは僕を見なくなったんじゃなくて、自分とお腹の子を守るので必死だったのかもしれない。

 そう思えばいくらか救われる様な気がした。

 母さん。僕はあなたのことが心底憎らしかったし許せなかったはずなのに、どうやったってあなたの事を最後の最後まで嫌いになることが出来ませんでした。

 だからこれは、せめてもの僕からお願いです。——どうか、お幸せに。

 そうして気付けば僕が代表を務め、僕だけの僕のためだけの卒業式がそっと幕を閉じようとしていた。

 その後最後まで何とか挨拶文を読み上げた僕は、一度マイクから離れかけようとしたものの、ここにきてようやく自分がこの式典の主役なのだと自覚が芽生え、誰かに向けた言葉ではなく僕自身にしっかりと言い聞かせるように再びマイクに向かって言葉を発した。


「僕は今日、——この世界を卒業します」


Fin.