遮るものなど何もない屋上で、風がフェンスを通り抜け、僕の身体を誘(いざな)う様に攫っていく。
その拍子、僕の身体は重力に従って真っ逆さまに落ちて行った。
僕を蔑んできた彼らはまるで僕をマリオネットの様だと嗤うだろうか。
それでもいいかと何故だか穏やかな気持ちで僕はそのまま目を瞑った。
「——さよなら、世界」
本来ならそんなキリのいい言葉で、僕の物語は幕を引くはずだった。
だけどその後、今か今かと襲い来るであろう痛みに備えていたはずの僕だが、どう言う訳か痛みが全くない。
それどころか恐る恐る目を開けてみると、そこには驚く様な光景が広がっていた。
「ここは一体、」
気付くと僕は見覚えなどないどこかの体育館にいた。
するとその時、僕の名前が突然マイク越しにアナウンスされる。
「——はいっ」
咄嗟に出たその声は、自分でも苦笑してしまうくらい部活動生特有のハキハキとした調子の声だった。
その声に自分自身が一番驚いていたのはいじめを受けて以来、声が喉に詰まる様な感覚に陥り大きな声が出なくなっていたからだ。
いじめによる精神的なダメージが蓄積され、次第に僕は自分の殻にこもる様になった。