やり直しの効かない一度きりの人生だ。

 学校の先生が「勉強しなさい」と口うるさく言っていたのは、何も良いテストの点を取ることだけが目的ではなかったのかもしれない。

 あれはその後の人生をより豊かにするためのツールとして、“知識”というお金では買えない価値あるもの身につけて欲しいからこそ教えてくれていたのかもしれない。

 今更気付いたって遅いことはわかっている。

 それでも僕は最後の日の朝、この気持ちを持って臨めることに改めて感謝した。

 「ごちそうさま」と、手を合わせ食べ終えた食器をトレーごと返却口へと運んだ僕は、ついにこの日が来てしまったのだと、決意新たにいつもの“あの場所”を目指し、旅立った——。


《第四章:僕のこと 第三節:日曜日fin.》