思い出すのは物心ついてから今日までの日々だった。

 僕にとって幸せと呼べる時間とは有限で、他所の家庭の子供と比べると短いものだったかもしれない。

 だけど僕は確かに幸せだったあの日々を覚えているし、今日に至るまでに選び抜いてきた選択に後悔など何一つありはしない。

だって僕は、僕なりに精一杯生きたから。

 たとえこの世界から途中でリタイアしてしまう形だとしても、僕は今日まで僕の中に灯る淡い灯火が理不尽にも風に晒され掻き消されようとしても、耐え抜いてきた。

 そしてそれは僕にとっての唯一の誉れだ。

 逆境に抗い続けるには、相当な気力も体力も有する。

でも反発し合うことだけが得策とは言えない。

 僕の中の灯火——限りあるこの命はどんなに風に吹かれゆらゆらと揺れようが最後の最後まで赤々と燃え続けるだろう。

そして僕に立ちはだかる最大の壁——理不尽に吹き付ける風は、母親の再婚相手だった。

 人は生まれながらにして、誰しも宿命を背負ってこの世に産み堕とされるのかもしれない。

僕にとっての宿命とは、もしかしたら逆境に立たされた時、“自分自身に打ち勝つこと”だったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

何か一つでも僕の人生を構築していた歯車が違えば、この宿命は別の何かに変わっていたのだろうか。

 だけど今日だけは、優しさに包まれて安らかに眠りにつきたい。