誰もいない部屋の中にポツリとこぼれ落ちる僕の声が、やけに大きく聞こえた。
そう言えばまだ、浴室は見ていなかったな。
浴室の扉を開け放つと、ウォシュレット付きのトイレに横付けする形で浴槽が備え付けられていた。
「このカーテン……なんだろ? え? てか、洗い場どこだよ」
僕の視線は浴槽とトイレを隔てる様にして垂れ下がっていたカーテンと、どこにも見当たらない洗い場を探し、彷徨う。
ろくに旅行など行ったことがない僕は、そのカーテンが何のためにあるのかを知らなかったのだ。
そのカーテンの使用用途は、知っておかなければもしかしたら不都合なことでもあるのではないかと考えた僕は、すぐにスマホを開きネットで検索をかける。
“ビジネスホテル_浴槽_カーテン”で検索すると、僕と同じ様な疑問を抱いた人たちの質問が投下された掲示板に行き着いた。
それらを斜め読みしていくと、どうやらこのカーテンは、シャワーカーテンと言って湯船に湯を張る時は外側に垂らし、シャワーを使用するときは内側に垂らせばいいらしい。
そしてこうしたタイプの浴槽のことを一般的に、ユニットバスと呼ぶのだと僕はこの時初めて知った。
「なるほどね」
とりあえず使い方がわかった所で、湯船に湯を張ることにした。
湯が溜まるまでの十五分間僕はまたテレビを見て、それから湯を張った湯船の中にフロントで貰ったアメニティの入浴剤をいれ、湯船に浸かってみる。