しばらくはそのまま動けなかった僕だけど、脱力した身体を何とか起こし部屋の中を見渡す。

 おそらくこれは至って普通のよくあるビジネスホテルの一室なのだろう。

 開放感がそうさせるのだろうか。

 部屋の窓際に設置されたシングルベッドに、勢いよくダイブした僕は心の底から歓喜していた。

 清潔なシーツにセキュリティシステムが完備された部屋。


「——凄いぞ。何もかも完璧だ」


 至って普通のこのビジネスホテルの一室は、僕にとってはまさに理想の空間だった。

 この場所にはあの男は居ないし、この場所では暴力に怯えて過ごさなくていいのだから。

 それからというもの僕は、眠るまでの間最後の日をどう過ごすのが最適なのかを思案した。

 しかし僕の頭では、精々ホテルのテレビで有料サービスを楽しむと言ったくらいしか浮かばなかった。

 ベッドに寝転がりながら、一覧表を適当に漁りアクション映画を二本鑑賞すると時刻は午後七時半だった。

若干の眠気を感じつつ伸びを一つし、起き上がる。


「風呂でも入るか」